物理の思考と勉強法のコツ|東大理三合格者による大学受験物理対策
物理の「力学」「熱力学」の実際の問題を使って、日々の問題演習でどこに着目し何を得ていけば物理を得意科目にすることが出来るかについて東大理三合格講師槇が制作したコンテンツを特別にプレゼントします。 物理は最終的に各分野をこのようにまとめたものを得ることが出来ればどこの大学の物理の問題でも高得点が獲得できます。これを熟読して大学受験物理を高い次元でマスターするコツ・勉強法を皆さんもしっかりと掴んでください。
物理の思考と勉強法のコツ「力学問題」
東大理三合格講師槇による物理の「力学問題」の勉強法と思考法の解説
物理の力学問題について考えます。
大学受験で出題される物理の分野には、「力学」「熱力学」「波動」「電磁気」大学によっては「原子物理」と分かれていますが、このうち最も頻繁に出題されるのは、当然ながら「力学」です。 なぜ当然かというと、力学は物理の基礎であり、力学を土台に他の分野が成り立っているからです。
例えば熱力学では、気体粒子がニュートン力学に従って運動することを前提に、巨視的に(粒子の集団として)捉えて状態方程式などで性質を表しています。 波動においても、学校の授業の始めでは、バネやそれにつながった物体の運動として説明されたのではないでしょうか。 ニュートン力学(古典力学)はすでに完成されており、それを理解しないと他の分野も理解出来ないために、受験において力学が重要視されるわけです。
ちなみに現在では、ミクロな視点で見るとニュートン力学が厳密には成り立たないことがわかっており、これにかわる量子力学という新たな力学が用いられています。こちらの量子力学はまだ未完成で、最近その根本となる原理が修正されるなどして話題になったりもしました。(https://www.nikkei-science.com/?p=16686)しかし依然として、私たちの目に見える物体の運動はニュートン力学により十分記述できるので、いずれも重要な学問です。
さて、大学受験物理での力学の話に戻りますが、力学の問題を見た時に最初にすることは、 物体にはたらく力をすべて書き込み、運動方程式を立てることです。 例外として衝突の問題では、はたらく力が瞬間的なので、代わりに運動量保存則など使い衝突前後の変化を考えますが、 単振動、円運動などそれ以外の運動ではすべて運動方程式を立てられるはずです。なぜなら先ほど述べたように、高校物理ではすべての物体はニュートン力学に従うからです。
物理に慣れてくるといきなり運動量保存則やエネルギー保存則を使い、さっさと答えだけ出してしまうのですが、慣れていないうちは必ず運動方程式を立てることをお勧めします。運動方程式を立てられないと運動の本質が把握できず(等加速度なのか等速度なのか、それとも単振動なのか)、保存則にしても誤った式を立ててしまうことがあります。
とにかくはたらく力を図に書きこむ作業は必ずして欲しいのですが、その際意識することとしては、 重力と電磁気力以外は、触れている物体からしか力がはたらかないことです。 当たり前に思われますが、結構このことが抜けていて、混乱してしまう人がいます。
例えば下図のように、質量m[kg]の物体Bを質量M[kg]の物体Aに乗せて、AをF[N]の力で引くと考えます。
AとBの間には摩擦があり、Aと床の間に摩擦はないとします。
このとき重力はAとBの両方にはたらき、Bには触れているAのみから力がはたらきます。
AからBにはたらく力は、垂直方向の抗力N と、水平にはたらく摩擦力fです。
AにはFの他には、触れているBと床から力がはたらきます。 Bからは、抗力N と、摩擦力fの反作用がはたらき、 床からは垂直抗力nがはたらきます。
なので力をすべて書き込むと下図のようになります。
これをもとにA,Bの水平、鉛直方向それぞれの運動方程式を立てると、
A : (水平)Mαxa =F - f
(鉛直)0 = n - Mg - N
B : (水平)mαxb =f
(鉛直)0 = N - mg
(A,Bの水平右方向の加速度をαxa,αxbとする)
となります。これがあればBがAの上を滑るときと滑らないとき、両方の場合に対応できます。 (滑らないときはαxa=αxbとなる)
結局、物体にはたらく力を考えるときは、
・まず重力と電磁気を考えて、次に
・触れている物体からはたらく力を一つずつ考える
という作業をすれば良いことがわかります。
これは基本的なことなのですが、慣れていない人では、意外とうまく書けないことがあります。 力学がいまいち伸びないという人は、一度このことに立ち返ってみてはどうでしょうか。 力を一つずつ丁寧に考えるようにすると、力学の感覚が磨かれ、「だいたいこういう運動をするんだな」というカンがはたらくようになります。それにより問題の解き方の筋道が立てやすくなります。
物理の思考と勉強法のコツ「熱力学問題」
東大理三合格講師槇による物理の「熱力学問題」の勉強法と思考法の解説
熱力学問題について考えます。
力学問題についての記事でも書きましたが、物理の基礎は力学です。
熱力学でも、気体粒子の運動をニュートン力学で考えますが、膨大な数の分子の多体問題(複数の物体を扱う問題)になるため、莫大な計算量が必要になり、分子1個ずつの運動を把握することはできません。(参考:マクスウェルの悪魔)そのため統計力学に基づいて分子の集団のみの振る舞いを考えています。
熱力学の問題では、状態が次々と変化する中での圧力や温度などの値を求めさせる問題がメインです。 このような問題では、まずは理想気体の状態方程式を考えますが、それだけでなく、気体に加えたエネルギーから内部エネルギーの変化や気体のした仕事を求める必要がある場合もあります。 つまり、熱力学の問題では状態方程式とエネルギー収支の2つの面から状態変化を考えることが大事です。
このときに重要なのは、状態が変化するとき、何が一定なのかということです。どういった状態の変化をするかによって、何が一定かが変わります。このことは特にエネルギー収支を考える上で重要です。
それぞれのパターンを見てみましょう。
ⅰ)気圧一定(定圧変化)
気圧一定の変化としてよくあるパターンは、ピストンにおもりを乗せてつり合わせているときです。
下図のような状態で気体に熱を与えなどして変化させても、気圧はピストンにかかる力のつりあいの式
PS = mg (Sはピストンの断面積)
を維持したままなので一定です。
このような変化のエネルギー収支を考えるとき、圧力一定なので気体のした仕事が求めやすい(体積の変化ΔVとして、PΔV)ことがよく利用されます。
ⅱ)体積一定(定積変化)
ピストンが固定されているときなど、体積を一定のまま変化させるときは、
エネルギー収支は変化の過程で気体が仕事をしないため、気体に加えられた熱はそのまま内部エネルギーの変化になることに注目しましょう。
ⅲ)温度一定(定温変化)
温度を一定に保った変化のエネルギー収支では、今度は逆に内部エネルギーが変化せず、気体に加えた熱はそのまま気体のした仕事になることに注目してください。
ⅳ)エネルギー一定(断熱変化)
問題の設定に「断熱板」や「断熱材」があるときは、外部との熱のやり取りが絶たれているので断熱変化と考えて構いません。
このときは、内部のヒーターなどを使って気体に熱が加わらない限り、気体にされた仕事は内部エネルギーの変化に等しくなること、またヒーターなどから気体に熱が与えられるときは、それが内部エネルギーの変化と気体のした仕事の和に等しくなることを利用しましょう。
また、大学によってはポアソンの法則を利用することもあります。過去問を確認しておきましょう。
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